第6回NSUGシンポ-2

<ドラマ><サカー>

A-3.「Let's Talk about WWW 〜WWW事始めから運用苦労話まで〜」
パネリスト:
坂本 仁明氏 NTTネットワークサービスシステム研究所
桧垣 泰彦氏 千葉大学
村田 敦士氏 サン・エクスプレス・インターナショナルインク日本支社
山下 薫氏 東洋エンジニアリング株式会社
モデレータ:
林 聡子氏 株式会社インターネットイニシアティブ

 サイトの管理人は、domainmaster, メールの管理者は、postmaster というように
Web の管理人は、Web master と呼ばれているそうであるが、最後のセッションでは、
実際に、WWW サーバを運用されている方々によるパネルディスカッションとなった。

まず最初に、約一年ほど前からサーバを立ち上げ運用されてきた、NTT の坂本さん
からお話があった。NTT の WWW サーバは、日本の WWW の表玄関でもあり、
What's New, 観光情報、ラジオ日本の一部、外国人旅行者のための日本の情報など、
海外に対して日本の情報を発信しているといった内容のものが多い。
一日のアクセスは、3万件で、55か国からのアクセスがあるそうである。

坂本さん曰く、大事なのは「インターネット感覚」ということであった。
最近インターネットが、社会現象のように騒がれているが、
正しいインターネットの知識を身に付けることが大切である。

次に、千葉大学の桧垣さんは、あらかじめ用意された、WWW のページを利用しての
お話で、去年の10月から運用しているという千葉大のサーバについて、CGI, FORM を
利用した、CULIS と呼ばれる、千葉大学付属図書館の図書館蔵書検索システムや、
IEC417 図記号データベースの検索システムを例に、運用にまつわるお話しをされた。
また、各規格に関する情報のデータベースの充実と、標準化運動の支援にも力をいれて
いるとのことであった。(http://www.ll.chiba-u.ac.jp/culis/paper/6th-NSUG/)

サン・エクスプレスの村田さんからは、4日間で 4000件のアクセスがあったという、
UNIX COSMOS での商品カタログサーバの経験を元に、ピザハットの例をひきながら、
WWW サーバによる、製品カタログの提供や、今後のオンラインショッピングサービス
の可能性について話された。また、その場合、セキュリティや、認証システムといった
ものが問題になってくるであろう。

東洋エンジニアリングの山下さんからは、Networld + Interop '94 のサーバの
体験を交え、プラントエンジニアリングといった、システムインテグレータとしての
WWW サービスの在り方について、また、幕張地域の情報提供サービスを行なう中で問題
になったことなど、ビジネスで WWW を運用する際の問題を中心に話していただいた。
これも、Web のアクセスによる実演を交えながらの説明であった。

最後に、モデレータである、IIJ の林さんからは、ネットワークプロバイダーとして、
いろんな回線速度のユーザにも対応できるように、なるべく、ホームページは軽く作る
ようにしていること、インターネットの初心者にとって、手引きとなるようなページを
用意するなど、日本の国内事情を考慮した、商用ネットワークプロバイダーとしての
WWW の在り方について、話していただいた。

次に、WWW を立ち上げる際の苦労話や、背景をということで、お話していただいた。

WWW の本家が CERN であるように、日本最初の WWW サーバは KEK で立ち上がったが、
NTT が実験を始めたのは、その後の去年の9月で、アナウンスは10月からとのことで
あった。最初は国外からのアクセスがほとんであったが、今年になってからは急激に
国内からのアクセスも増えている。

これは、NTT の高田さんらの手による、Mosaic-l10n が開発されたことも手伝っている
と思われるが、WWW のサーバが、NTT の What's New に登録されているものだけでも、
現時点で、約 100 サイト (全ドメイン数 = 約 1500) となったことからも考えられる。

NTT の What's New は、日本で公開されているほとんどの WWW サーバを網羅しており、
実質的に日本の WWW サーバのインデックスとなっている。

また、「WWWは電子化たらい回しシステム」ともいっていたように、
インターネットを利用した、協調システムであるともいえる。
これは、すべての情報を自分のところでかかえるのでなく、分散してメンテナンス
されている情報が、リンクをはることで、一体化され、アクセスできるようになる事
を言う。

次に、東洋エンジの山下さんのところを例に、WWWを立ちあげる際に使用している
機材などに関しても、話をしていただいた。総員10名、うち女性が7名という環境で、
サーバには、SPARC Classic を用い、Mac で絵を書いたとのこと。
まず、最低限必要なものとしては、IP回線、UNIXマシン、httpd ソフトウェアといった
ものがあげられる。

また、絵を書くには、ツールは選ばないが、絵心が必要である。
しかし、全体のシステムとしてまとめる際には、インターネットの知識やユーザ心理と
いった事柄も必要とされてくる。東洋エンジのホームページのポリシーとしては、
最初のアクセスで、驚かせる、という方針だということであった。

それから、データ作成環境はどんなものか?という質問に対しては、
テキストベースなら LaTeX やプレーンテキストからのコンバータを使用する、
なれれば直接エディタでつくる。絵などは、Mac のお絵書きツールがあればよいが、
X11 でも、xpaint, xv や netpbm (pbm+) などのグラフィックコンバータがあれば十分
である。といった声も聞かれた。

次に会場からの質問に対してパネラーが回答する時間を設けた。

日単位のアクセス頻度はどうか?という問に対しては、
IIJ では、一概にはいえない。イベントや、休みによってかなり変動する。
Interop 中 5万〜6万アクセス程度。サーバのデータは、6メガ程度で、
NTT では、68万件/8月、70万件/9月で、What's New には、一日3万件とのこと。
千葉大では、6万〜7万程度であるが、アクセス数の評価は難しい。
またトラフィックも、おいているデータの大きさに大きく依存するし、
最近は、cache server も多くなってきているので、一概にはいえない。とのこと。
サン・エクスプレスでは、UNIX COSMOS の期間中、4日で、4000件。
東洋エンジでは、9週間で、リクエストが10万件、884メガのアクセスという
ことであった。

WWWサーバアナウンス直後は高い頻度だが、ある程度経過すると落ちつく、
また、日によって違う(現在のIPの接続状況からみるとやはり平日が多い)
意外に海外からのアクセスが多い。海外55か国からのアクセスがあるそうである。
最近は、proxy/cache server などを利用している所も多いので、一概にはいえない。
また、WWWstat という、WWW のアクセス状況の統計を調べるツールがある。

また、頻繁にアクセスしにくる人がいるか?という問に対しては、
たしかに、常に home page をポーリングしているような気配も感じられるが、
一部のサイト、(特にSun.COM) からのアクセスは大変多いとのことであった。

それから、HTML作成にデザイナーは必要か?という問に対しては、
東洋エンジのように、デザイナーがいて、3週間で220ページ、35MBの
データを作成したという例から、サンエクスプレスのようにマシンのセットアップから
HTML 書きまで、すべてを一人でやっているという所など、様々であった。
現時点ではまだ、HTMLデザイナーと呼べる人はいないが、ゲーム業界のように、
今後はそういった仕事も必要になってくるかもしれない。

次に、HTML作成の勉強方法は?という問に対しては、
MosaicにはHTMLソースを書き出す機能があるのでそれを使用して、
各サイトのHTMLのソースをみることがよい勉強になるであろうとのことであった。
VT100 で、WWW にアクセスする人はあまりいないだろうが、
O'Reilly の GNN の Homepageはよい例になるそうである。(http://gnn.com/)

今後のWWWについてということでは、
情報の知的所有権について、よく考えておく必要がある、といった問題点や、
必要な人に必要な情報をを提供するチャネルとして、大変有効であるので、
マーケティングなどに非常に強力なツールとなるだろう。
また、その性格上、本当に、必要な人だけがアクセスしにくるという点からも、
サブメジャーあるいはマイナーなマーケットへの情報の提供に向いているだろう。
今は、研究・開発部などで運用しているが、将来は広報・宣伝部の仕事となるだろう。
WWW を使えば誰でも、情報発信者になれるが、発信する情報の内容が問題。
また、あふれる情報の海を前にして、情報検索の手段を持つ必要がある。

時間いっぱいになり、WWW が私にもたらしたものは?という質問で最後を締めくくった。

o 国際的な通信の手段、世界中に友人ができた。
o 欲しい人に、欲しいだけの情報を提供する手段が得られた。
o ビジネスチャンスとしての可能性が見えてきた。
o サイバースペースを実感するものがまたひとつふえた。
o たまたま置いてもらった、絵からこのような道に入り込んでしまった。
o 自分の書いた絵を、世界中の人に見てらうことができた。

などが、あげられた。

また、現在の不満ということでは、電話回線の値段や、ネットワークの太さなどが
あげられていた。

実際に運用されている方々のお話だけに、いろいろと参考になるお話が多く、
これから WWW サーバの運用を計画されている方にも、大変役立ったと思われる。

また、これらの話の最中には、正面のスクリーンに、関連する WWW のページが
表示され、内容の理解の手助けとなるようにしていた。

以上