第6回NSUGシンポ

<ドラマ><サカー>
https://web.archive.org/web/19981202173534/http://www.nsug.or.jp/seminar/_log/1994.html

第六回NSUGシンポジウムレポート

1994年9月22日、東京都千代田区のホテルエドモントで行なわれた、
第六回NSUGシンポジウムの午後のセッションAについて、レポート致します。

午後のセッションAは、最近話題の Internet, WWW に関連したセッションを
ということで、立ち見もでるほどの人気でした。
まず、NSUG-CD'94 の作成に協力いただいた、IIJ の林さんから、
NSUG-CD'94 のインターネットに関するソフトウェアの紹介と、
NTT の佐藤氏による WWW の解説。そして最後に、実際に WWW サーバを運用され
ているみなさんによる、パネルディスカッションが行われました。

以下、当日の講演を順を追って、ご報告します。

A-1.「NSUG CD'94を使ってInternetにつなごう」
講演者:株式会社インターネットイニシアティブ 林 聡子氏

 今年 NSUG が作成した、NSUG-CD'94 は、X11R6 と Internet Utilities そして、
NSUG 会員からのソフトウェアという3本立ての内容となっているが、
本講演では、その中からインターネット関連ソフトウェアを紹介する形で、
インターネットについての説明、及びインターネットへの接続方法などの説明が
行なわれた。

まず、インターネットの概説の紹介ということで、1969 年 APRANETから発展し、
今や世界中を網羅するようになったインターネットの歴史について触れ、ついで、
1984 年の JUNETに始まり、現在の WIDEへと発展していった日本の現状について述べた。
(ftp://ftp.cs.wisc.edu/connectivity_table/ の接続地図を参照した)

インターネットへの接続先としては、WIDE などの各種研究ネットワークや地域ネット
ワーク、さらに利用目的(AUP)が自由な、商用ネットワークといったものがあり、
インターネットに接続するためには、その中から、まず、接続先を探す必要がある。

ほとんどのインターネットの技術はインターネット上で開発されており、
TCP/IPの情報、利用技術、ソフトウェアはすべてインターネット上にある。
従って、インターネットに接続されていないと、最新の情報を得ることは難しい。

ネットワーク上で開発されるソフトウェアは基本的にフリーソフトが多く、
したがって、サポートもあまり期待することはできない。

後半には、インターネット接続のソフトウェアの具体的な紹介が行なわれた。

ネットワークとネットワークの接続では、ネームサーバ、sendmail, CF といった、
ネットワークを構築するためのソフトウェアが必要となり、bind, resolv といった、
ドメイン名や、IP アドレスを取得するためのソフトウェア、また、MH, pop, imap
などの mail 関連ツール、そして、INN, cnews などの news 関連ソフトウェアが
必要となる。

Dial-Up IP 接続を前提とした、個人での接続の場合は、ppp, dp といった、
ポイント・ポイントプロトコルの接続用ソフトウェアが必要となるが、
一度、接続してしまえば、先方の mail/news sever を使用することができ、
mail, news の client のみインストールすればよいことになる。

その後、必要に応じて、ftp, archie, gopher, Mosaic といった、情報システム関連
ソフトウェアを導入したり、また、マルチキャストの実験のためには、vat, nv
といったものもある。
また、セキュリティ対応のソフトウェアや、トラフィックモニタ用のソフトウェアが
紹介された。

最後に、ソフトウェアのソースは、gzip により圧縮されて収録されているため、
gunzip して、tar し、必要に応じて、patch を当てるといった、インストール
の準備手順についても説明があった。

今回は時間も短く、個別ソフトウェアの説明は詳しく行なわれなかったが、
今後、機会があれば、解説記事なども期待したい。
また、これらのソフトウェアを使いこなすためには、インターネットに関する
基礎知識が不可欠である。


A-2.「World Wide Web (WWW) を取り囲む最新トレンドと技術動向」
"Trend and Topics of the Wold Wide Web."
講演者:NTTネットワークサービスシステム研究所 佐藤 進也氏

 本講演では、WWW の実演を交えながら、WWW に関する技術的な内容の解説と
最近の動向に関して、お話していただいた。

まず、最初に、WWW project の本家である、CERN のホームページを起点として、
インターネットソサイアティ、インタロップのページというように、Hyperlink を
たどりながら、インターネット上のあらゆるリソースをリンクしようとする、
World Wide Web のめざす、Global で Seamless な情報空間についての説明があった。

WWW を構成するものとしては、リソースを指定する URL、ハイパーテキスト
記述する HTML、ハイパーテキストを転送する HTTP、そして、
ハイパーテキストを動的に生成する CGI がある。

URL は、インターネット上のリソースのありかを一意的に指定するもので、
HTML は、SGMLベースのハイパーテキスト記述用言語で、というマークを
埋め込むことによって文書を構造化する。
HTTP は、ftp のような、転送プロトコルで、HTMLで書かれた文書や、画像、音声、
動画データをやりとりする。
最後に、CGI は、Common Gateway Interface と呼ばれるように、
httpd のバックエンドで動き、httpd拡張機能を実現する外部プログラムとの
インターフェィスである。

WWW 関連ソフトウェアとしては、サーバには、CERN httpd, NCSA httpd, Plexus
などがあり、クライアントとしては、Chimera, NCSA Mosaic, tkWWW, W3-mode/Emacs
といったものがある。

また、ユーティリティとしては、HTML エディタ・フォーマッターとして、
HoTMetal, HTML-mode/Emacs, latex2html, mail2html, plain2html などもある。
CGI 関連にも、Archie, Wais, SQL などとの gateway を行なうものがある。

WWW にアクセスするには、まず、クライアントを決めることである。
また、たくさんあるリソースから必要なものをさがすために、
Meta-Index, Virtual Library などの、インデックスを利用したり、
WWW Worm, W3 Catalog といった検索サービスを利用したりする。

それから、firewall の対応のために、proxy server をあげたり、
回線の太さの制限などから、cache を利用したりすることもある。
今後、Mosaic の利用が増えるようになれば、cache は重要になってくるだろう。

次に、自分で WWW のサービスを始めるためには、まず、httpd をインストールし、
Home Page にデータをおくことから始まる。人にみてもらえるようなものができたら、
NetNews, mailing list などにより、広く世間にアナウンスを行なう。

一旦、サーバを立ち上げてしまったあとは、アクセスログを調べたり、
サーバの内容を update するなどの、メンテナンスに気を配る必要がある。

データを作るにあたっては、TEXT だけでなく、gif file や jpeg による、
画像データや、MPEG による動画、audio file なども扱うことができる。

また、CGI を使用することで、Clickable maps や、fill out FORM とあわせて、
検索や、問い合わせシステムなども作成することができる。

最後に、WWW の現状と今後として、いくつか最近のトピックスから話があった。
それによると、NSFNETバックボーンのトラフィックは、月に1TBを越えており、
あまりのデータのために、Get lost in the Web が現実のものとなりつつあるそうだ。

また、現在の HTML の機能を拡張した、HTML+ が考えられているが、
今後は、Security や、Authentication の問題にも取り組む必要がある。

現在、WWW の団体として、WWWO (W3O) という団体があるが、
従来、インターネットでの標準は、IETF で決められているだけに、
そことの関係など今後注意しておくべきだろう。

WWW によって、いろんな情報へのアクセスが容易になったが、同時に、
個人でも世界中にむけて、情報発信が簡単にできるようになった。
これにより、共同研究のチャンスが広がったり、外国の研究者からも
気軽に声をかけてもらえるようになった。

なお、今回アクセスはできなかったが、アメリカには小学生が作った WWW の page
もあり、誰でも簡単に世界中に情報の発信ができるようになっている。
WWW は、インターネットを理解するヒントとしても、重要な役割を持っていると
いうことができよう。

時間が不足気味で、詳細を省いた箇所もいくつかあったが、WWW に関する概略の理解
を得ることができたと思う。WWW の出現により、我々はインターネット上に、強力な
情報発信の手段を手にしたことが実感できる。

なお、本講演の資料は、以下のところにおかれています。
http://www.ntt.jp/people/sato/NSUG/6th-symposium/

注:
WWW World-Wide Web
URL Uniform Resource Locators
HTML HyperText Mark-up Language
HTTP HyperText Transfer Protocol
CGI Common Gateway Interface

以上